事例紹介 —対談—
OUR BUSINESS
経営者と伴走者の
信頼関係で実現するMBO
オーナー企業の事業承継
事業に影響が出るようでは
本末転倒
笹山:御社とご縁をいただき、あらためまして本当にありがとうございました。
MBO※1をされることになった背景をお話いただけますか?
岩井:当社はオーナー企業で、オーナーが亡くなり受け継がれた息子さんから当社株式の承継に関する相談を受けたことがきっかけです。
笹山:MBO以外の選択肢もいろいろおありになったのではないでしょうか?
岩井:M&Aの提案もいただいたのですが、我々の業態は「広告」ということもあり、競合などの関係で事業に影響が出るようでは本末転倒ですので、最初の段階でお断りしました。
笹山:今おっしゃったことは、MBOの非常に大きなポイントだと思います。MBOは経営者が自分個人のためではなく、会社という組織の今後のために実施するということです。また、MBOは手段であって目的ではありません。MBOをしたら、何かが急に良くなるとか、企業がそれだけで成長するわけではないので、手段として考えて、そのあとどうしていくかが重要です。
笹山:MBOを決断されるにあたって、いろいろ悩まれたと思うのですが、どのようなことを岩井社長ご自身としてお考えになられたのですか?
岩井:MBOを行おうという経営者は基本的に独りぼっちです。相談相手は誰がよいのか、私が決断していいのかなど、いろいろ悩みました。相談相手としてMCoさんは、我々側でもオーナー側でも市場の関係者でもなく、非常に五分五分の関係でお話できたので、その客観的、中立的アドバイスはとても有益でした。
MCoとの出会い
孤独な経営者にとって、
もっとも必要な存在
笹山:弊社を選んでいただいた決め手は、どういうところだったのでしょうか?
岩井:当時の悩ましい論点に関し、MCoさんのお知恵に解決の糸口が見えたからです。
笹山:私どもがMBOのプロセスの中でアドバイザーに近い立場でお手伝いをさせていただいたこともご評価いただけたということでしょうか?
岩井:はい。あの時の笹山社長の「きちんと港の外までお連れします。それはご安心ください」という言葉は一生忘れません。不安な時に、あの一言はものすごく大きく「じゃあ、全面的に頼りましょう」と思ったことは明快に覚えています。
笹山:私どもはMBOの資金を出させていただく以外で、どこまで何をご提供できるか、ご提供したときに相手の企業さんや経営者の方々と信頼関係をどこまで築けるかを大切にしています。MBOは途中でいろいろなことが起きますので、私どもはそれを一緒に乗り越えていくというところを重視していて、伴走者として主たるランナーである経営者をいかにサポートさせていただくかというところをいつも考えています。
岩井:リスクテイクしなければいけない中、MCoさんは非常にメンタル面で支えになってくれました。たくさんの道筋を示していただいた上で、一番いいと思う提案をしてくれたことも非常に安心しました。
笹山:その企業や経営者が何を必要としているか、何を望んでいるかを的確に把握し、どうそれに応えていくか、というのが伴走者の本来のあるべき姿かと。お客さまに、似合わないものをいくらお勧めしても意味がないと思っています。
周囲の反応
何も変わらないことが最高評価
笹山:MBOを実行された後、社内外にどのようなご説明をされ、皆さまはどのようにMBOを受け止められたのか、教えていただけますか?
岩井:何かが急に大きく変わらないことが大前提でした。社員にもお取引先にも、「今までの太陽企画と何か変わることがありますか?」と聞かれ、「いや、特にはないです」と答えると、「じゃあ、いいですよ」と。あんなに大変な思いをしていたのに、外に出ると、あまり関係ないというのが一番印象的でした。むしろ何も影響がなかったことが一番良かったのだなと思いました。
笹山:弊社もMBOをさせていただいたのですが、そこはまったく同感です。資本異動がきっかけとなって何か大きく影響を受けてしまう潜在的なリスクがなくなったわけですね。
笹山:何かマイナス面や気になったことはありますか?
岩井:マイナス面は、借り入れが増えたことでしょうか。ただ、やるべきタイミングできちんとできたことは良かったと思います。
笹山:タイミングは重要ですね。環境が激変する中で大株主が資本を動かそうとする、オーナー経営者の年齢が一定以上になり承継のことを真剣に考えるようになったなどの「背中を押す事情」が顕在化し、MBO実行に至ったというケースが多くあります。弊社自身もそうでしたが、御社は、そういう意味ではとても良いタイミングにとても良い形でMBOされたということではないでしょうか。
岩井:良かったと思います。ある程度お金を借り入れて、ローンを払って家に住んでいるような気分です。きちんと返していける能力と、将来のビジョンが見えている会社でしたら何も問題はないですから、会社としてフェーズをひとつ進めたという感覚です。
MBOはスタートライン
次の世代に
どう引き継いでいくかが鍵
笹山:岩井社長の場合は、次の世代に引き継いでいく─ということをMBOの検討段階からすごく意識されていたのですが、これはどのような発想だったのかをあらためてお聞かせいただけますか?
岩井:オーナー社長の時代にいつも会社経営は大変だろうなと感じていて、この会社が仮に誰かに渡ったとしても、大変さがそのままずっと続いていくくらいなら、いずれ社内で次世代に株式を渡していく、つまり実質的にMBOを繰り返しながら事業がずっと続いたほうがいいと思いました。
笹山:太陽企画さんが創業から50年続いてきて、これから先も続いていくためにということですね。これを検討段階からお考えになられていたというのは本当にすごいと思います。
笹山:成功するために重要だった点を挙げていただくとどんなことがありますか?
岩井:社業がうまくいっているからこそMBOを成功できたと思っています。今回のMBOは社員たちに対し、私が作ったプラットフォームで安心して商売を続け、どんどん暴れてください!ということを示せたように感じます。
これからMBOする経営者へ
専門家に相談し、伴走して
もらうことが山登りの近道
笹山:ご自身の経験を踏まえて、MBOを考えられている経営者の方々にアドバイスできることはありますか?
岩井:新しい知識と相談相手が必要になります。山登りの際に専門家に聞くのは当然で、一緒にこの山を登りましょうとなったら、多くのアドバイスをもらい、一番安全なルートを一緒に探し、安心して安全な所を登る。状況はいくらでも変わるので、まずは頼れる人に相談しないと、山に登るどころか、いきなり迷子になってしまいますから。
笹山:MBOで頂上に登ったら終わりではなくて、その後もいろいろお付き合いさせていただいていますが、いかがでしょうか?
岩井:ちゃんと港の外までご案内していただいて、今でもこうやってお付き合いできるような関係を築けたことが本当に財産だと思っています。
笹山:ありがとうございます。御社のMBOを通じてご縁をいただき、それで喜んでいただける関係が続くということは本当にありがたいですし、あらためていろいろお話をうかがえて、とても良かったです。ありがとうございました。
※1 MBO:Management Buyout(マネジメント・バイアウト)は経営者あるいは経営陣が自社の株式を買い取る取引。